ここでは、折角の機会ですので、日本馬の快挙達成となったブリーダーズカップについて少々触れてみたいと思います。
本場米国ブリーダーズCは1984年に創設され、年間総決算、米国カテゴリーチャンピオンを一気に決めてしまうという、米国競馬の祭典です。
今でこそ、世界でも有数の高額賞金が飛び交うビッグイベントとなりましたが、創設のきっかけは競馬人気凋落への歯止め策であり、生産者が資本拠出するなどの苦労もあったことがレース名の由来とされています。
創設当時は7レースで1日開催でしたが、様々な変遷を経た結果、現在は14レースと倍増し2日開催、一時期は障害レースやマラソンレースもこのシリーズで行われていました。
日本勢からは、これまでBCクラシックにはタイキブリザードやエスポワールシチーなど4頭のべ5回参戦するも木っ端微塵に粉砕されてしまい、他のBCレースも歯が立たず、日本勢が勝利するのが難しいとされてきたこのシリーズにおいて、ついに日本勢が勝利する日が訪れました。
<BCフィリー&メアターフ>
1着・ラヴズオンリーユー
父ディープインパクト、形相遺伝として影響が強いのは母母と診ています。
ローテ的体力は料的遺伝2.25であり、激走後は中8週程度は必要。
このデルマー競馬場は4年ぶりのBC開催となりましたが、芝コースはダートコースの内側に設置、そして日本の芝コースでは存在しない「左回りのキツイ小回り」という特殊な舞台設定で最後の直線も短く、日本の地方競馬場の芝バージョンともいうべき舞台に本馬が対応できるかが焦点となりました。
レースは本馬はゲート好発から好位につけましたが、向正面から他馬に被せられ、最終コーナーではかなり動きにくい場面がありましたが、直線に入ると、先に抜け出していたウォーライクゴッデスとマイシスターナットの間を突いて鋭い脚で抜け出し、差し切り勝ちを収めています。
半馬身差の2着にマイシスターナット、さらに頭差でウォーライクゴッデスが3着、連覇を狙ったアウダーリャは5着に終わっています。
(馬名は馬券発売があったことからカナ標記)
本馬は初めてとなる特殊な舞台設定に問題なく対応できたわけですが、本馬の血統表を見れば一目瞭然、形相遺伝背景も含めて母方はバリバリの米国血統で構成されており、米国の舞台設定に難なく対応できたのも当然であり、日本以上に硬いとされる路盤にも対応しました。
当日の日本版オッズでは1番人気に押され、現地版では3番人気でしたが、その現地版で1番人気に押されていたウォーライクゴッデスと本馬が覇を競う存在と診られていましたが、春の香港G1を制したからでしょうか、現地でも本馬の能力は高く評価されていたようです。
もっとも、米国の芝路線は距離が延びるほど高能力の存在は手薄になることから、これまでも2005年にシーザリオがACCオークス、2016年にはヌーヴォレコルトがレッドカーペットHPとG1を制していますが、米国においてBCを制するというのは別格と言えます。
今後いつまで現役生活を送るか分かりませんが、引退後の繁殖としても、サンデーサイレンスの血を引く繁殖ということもあり、米国から繁殖ごと購買オファーが殺到するのではないでしょうか。
<BCディスタフ>
1着・マルシュロレーヌ
父オルフェーヴル、形相遺伝として影響が強いのは、母の先祖の隔世遺伝として3代母父の母母と診ています。
ローテ的体力は料的遺伝6.50であり、激走後は中2週程度は必要。
私はBC当日の朝はテレビ中継に合わせて朝早く起床、ラヴズオンリーユーの勝利は想定の範囲内で観戦していましたが、BCディスタフを本馬が勝利というニュースで驚いて目が覚めました。
今年のディスタフは、メインであるクラシックよりも注目を集めており、今年G1を4勝を含めて5連勝中の Letruska、ケンタッキーオークス馬 Malathaat、昨年のケンタッキーオークス馬でG1を3勝の Shedaresthedevilといったメンバー構成でしたが、 Letruskaが6連勝でG1を5勝目なるかが注目されていました。
レースは最内枠の Private Missionが果敢にハナを奪いに行き、Letruskaも逃げ馬であることから負けずに先行、この外から Shedaresthedevilが被せに行くという熾烈な先行争いにより半マイル通過44秒97という超ハイペースの展開となりました。
本馬はこのハイペースに追いて行けず後方3番手からとなりましたが、最終コーナー手前から米国ダート競馬の典型的なサバイバル、脱落消耗戦となったことで先行勢が壊滅、本馬が直線に入る手前から早くも先頭に立ち、一旦は内から交わされましたが、ゴール寸前で差し返しを見せ、際どいハナ差で大金星を収めています。
1番人気に押されていた Letruskaは、本馬から30馬身も離された10着大敗に終わっています。
BCシリーズは今年で38回目となりますが、本馬は日本馬による初の米ダートG1勝利を達成、日本競馬史に価値ある大金字塔を打ち立てました。
このレースを血統ペース的に診ると、最内枠から逃げた Private Missionは3代母を形相遺伝対象としており、逃げて作り出した Ribot系統の流れは、この血の特徴であるタフなペースになりやすく、このハイラップでは消耗ペースは必然です。
典型的な米国的サバイバルとなりましたが、実はその根底にあったのは欧州的スタミナの血であり、本馬は3代母父ブレイヴェストローマンを経由して遡り、米国に導入された欧州スタミナの血の背景を受けていることが大きく、このレースの血統ペースに適合し、ハイペースに脱落せずに後半の強気の競馬が実現したと診ます。
最後の直線で内から伸びて本馬とゴール前で競り合った Dunbar Roadという馬は、実は逃げた Private Missionと親戚関係にあり、Private Missionの母 Private Giftの孫産駒にあたります。
そして、この2頭は形相遺伝背景が酷似していることから、Private Missionが逃げる展開で Dunbar Roadが来ることは血統ペース的には必然の走りでしたが、この絶好の適合の良さを持つ相手に勝利したという点も大きいと診ます。
今回勝利した2頭の調教師は、ディスタフを制した直後に「死んでもいい」と喜びを表現していましたが、今回の勝利はその手腕が大きいのは言うまでもありませんが、この2頭が最後の直線で見せた闘争本能の発揮が血統面では大きかったと診ます。
ディープ産駒のラヴズオンリーユーが披露した他馬の間を突き抜けて伸びる走りや、オルフェ産駒のマルシュロレーヌが披露した最後に差し返すという走りは、サンデーサイレンスの血が本来的に持っている闘争本能を発揮した走りと診ます。
以前このブログでも述べたことがありましたが、牝馬同士の間でも牝馬間特有の闘争本能は存在し、牡馬のボスとして血を残す戦いとは異なり、例えれば江戸時代の大奥のような序列闘争となります。
日本では溢れかえっている父系サンデーサイレンスの血も、米国では稀少系統であり、日本国内では父サンデー系故に繁殖シーズンやG1シーズン期では足を引っ張られる場面もありますが、父サンデー系が希少である海外競馬では、この血の闘争本能が活性化されることになります。
サンデーサイレンスという馬は、一言で言えば闘争本能の塊の血統背景にあり、これが種牡馬としての大成功に繋がったわけですが、この血も溢れかえってしまっては、その闘争本能が減退・喪失に見舞われる状況にあります。
他にも海外競馬で環境を変えて良績を上げる系統産駒も多く、海外でサンデーサイレンスの血の需要が高まっているのは皆さんもご存知のとおり。そして、その走力の源泉は旺盛な闘争本能にあります。
なお、何故種牡馬サンデーサイレンスが大成功したのか、この詳細な血統解説については、申し訳ありませんがこの無料ブログでは述べることはできません。
血統コンサルや配合コンサルの場面などでクライアント様に公開する重価値事項と位置付けておりますので、ご理解をお願いいたします。
さて、私のコンテンツ「重賞分析極秘ファイル」は、平地重賞を対象として、レースの主要な出走馬について血統ペース理論及び中島理論の観点から、どの馬が有力なのか、どの馬が危険なのか、主要馬を中心に診断した上で穴馬を含めて予想する内容のコンテンツです。
それから、現在姉妹メルマガとして「重賞分析極秘ファイル・買い目プラス」をレジまぐにて展開しておりますが、こちらは重賞にリステッドOPまで対象を広げて、買い目まで提供しております。
先週はアルゼンチン共和国杯とみやこSを予想しましたが、単発記事版でアルゼンチン共和国杯を的中しております。
メルマガ予想的中の実績については、サイトで無料でご確認頂けますので、一度お試しいただけますと幸いに存じます。都合によりブログ内にリンクを貼ることができませんが、レジまぐ内にてご検索願います。
世界中を苦しめている新型ウイルスは日本国内では新規感染者が逓減し、日常を取り戻す動きが始まっています。
これに伴って、競馬場への入場者数も規制が緩和され、秋G1シーズンに観客が戻りはじめていることは良い方向と思います。
世界の競馬事情も欧州は凱旋門賞が終わり、米国はBCが終了と今年を締めくくる流れにありますが、日本ではまだG1シーズンの真っ最中、皆様におかれましては健康管理には留意いただき、秋競馬を楽しんでいただきたいと思います。
メルマガについてはリンクをブログ右側に貼っておりますので、有料となりますがよろしかったらお願いいたします。
今日はここまでです。
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